加速する脱ペトロ化、燃料電池車に追い風

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今月13日トヨタ自動車がEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の開発・生産を担当する「トヨタZEVファクトリー」の拡充を行うことを発表した。また2020年にはFCVの生産能力を現在の10倍以上引き上げることを発表した。

EVよりも先に燃料電池車は主導権を握れるか

トヨタ自動車が2014年に燃料電池車MIRAIを発売してから約5年ほどたつ。それを受け2019年6月までに全国に108もの水素ステーションが建設された。現在も26カ所で建設が予定されている。 これまでは価格やインフラ整備等の理由で、FCV(燃料電池車)よりもEV(電気自動車)を推し進める流れが自動車業界で起きていた。ディーゼルゲート事件以降、欧州各社はクリーンディーゼルに代わるEVに開発をシフトし、環境問題への取り組みをアピールし始めた。中国もこれまで技術が熟成されているエンジン車の開発するよりも、EVの研究に力を入れ世界をリードしようと多くの補助金を出しており現在EVの分野において世界で台頭を見せている。EVに圧倒されてきたFCVだが、ここにきて普及拡大への流れがきている。

自動車部品大手の独ボッシュが2022年までに1億ユーロ(約120億円)もの資金を投じ、燃料電池自動車の主要部品の開発、量産を進める計画を発表した。同社は「燃料電池スタック」と呼ばれる水素と酸素の化学反応により発電させる発電装置を量産する。トヨタ自動車も時を同じくして組織拡充を取り決め、MIRAIの次期モデルとなる車種をライン生産化しFCVの年間販売台数を現在の10倍である3万台にする目標を掲げた。「燃料電池スタック」や「高圧水素タンク」の生産設備を整え20年を目途に本格的に稼働させることを公表した。

現在MIRAIの販売価格が普及率拡大の足かせとなっているが、2019年7月現在エコカー減税、CEV補助金等を含めて約220万円程度の購入支援金が出ている。この制度でどこまで普及率を高められるのか注目だ。

東京五輪は最大の水素社会実現の一歩となるか

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、最高位スポンサーであるトヨタ自動車は大会へFCVや自動運転車などを3000台以上の提供することを発表した。全世界が注目する中、トヨタが自社のクリーン技術をアピールする場となりそうだ。また自動車以外でも水素をエネルギーを普及しようとする動きがある。オリンピック開催後選手村として使用された場所を分譲マンションとし、水素を利用して電力や熱を生み出す活用をする予定だ。水素からエネルギーを生み出すことで、水素を各マンション貯蔵しておけば災害時に利用できる算段だ。それと同時並行で東京ガスによるパイプラインでの水素の直接供給を目指した工事も進められている。

FCV増産に伴い、影響する企業とは

トヨタ自動車がFCV設備拡充や現在の10倍となる販売目標を掲げたことで、各業界・企業へどのような影響が生じるのか。下記は経済予測SaaS『 xenoBrain(ゼノブレイン) 』の分析結果の一部を参考として見ていこう。

上図はxenoBrainによる解析結果の一部です。

トヨタ自動車(7203)の燃料電池車増産計画発表により、燃料電池関連部品の製造会社の増収が期待される。直近としては燃料電池スタック製造に関連する旭化成(3407)や東レ(3402)に需要が駆け込むこととなるとみられる。普及率が高まるにつれ、水素ステーションの拠点拡大も期待される。石油精製・販売をはじめとする総合エネルギー会社としてのノウハウを生かし水素供給インフラ構築を推し進めるJXTGホールディングス(5020)にも大きな期待が寄せられる。

その他にも実際のxenoBrainではリケン(6462)、サンデンホールディングス(6444)、ミツバ(7280)、北川製鉄所(6317)などが自動車エンジンが取って代わられ需要が下がるとみられネガティブな影響があるとみられる。