進む脱プラスチック、G20合意の影響を探る

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レジ袋やストロー等のプラスチックごみによる海洋汚染の問題が契機となって、世界中で脱プラスチックの議論が進んでいる。2016年世界経済フォーラム年次総会の報告書によれば、 毎年800万トンもの廃プラスチックが海に流出しており、恐ろしいことに2050年までに海洋中のプラスチックの量が魚の量を凌駕すると言われている。

海洋汚染を招くプラスチックごみが世界的な問題となる中、 6月に開催されたG20サミットで2050年までにゼロにする目標を導入することで各国が合意した。 まず初めに、世界の脱プラスチックへの動向を見ていこう。

世界の脱プラスチックへの流れ

世界各地での、脱プラスチックに向けた取り組みの現状を以下にまとめた。

地域 取り組み
EU 2030年までにEU域内で使用されるすべてのプラスチック容器包装をリユースまたはリサイクルすると同時に、使い捨てプラスチック製品を段階的にゼロにすることを目指す。域内では、年間約2,500万トンのプラスチックごみが消費され、リサイクルされるのは30%以下にとどまっている。
英国 「今後25年間の環境計画」を発表。柱の一つとして、海を汚染しているプラスチックごみを2042年までに可能な限り削減することを掲げています。具体策として、イングランドでレジ袋の有料化、さらに4月には、プラスチックごみの削減を加速するため、使い捨てのプラスチック製ストローやマドラーなどの販売を禁止すると発表。早ければ2019年に実施される見通し。
台湾 2030年までに、飲食店でのプラスチック食器類の提供を全面的に禁止すると発表。プラスチック製のストロー、テイクアウト用カップ、使い捨て食器などの提供を2020年、2025年、2030年の3段階で規制していく計画。
米国 2018年6月、カリフォルニア州は、飲食店でプラスチック製ストローの提供を全面的に禁止にした。マサチューセッツ州の一部地域では、ペットボトル飲料水の販売禁止する条例が施行されている。

国家、地域単位だけではなく、企業ごとにも、脱プラスチックに向けた取り組みは加速しつつある。

マクドナルドは、英国とアイルランドの全店舗で、プラスチック製のストローから紙製のストローに順次切り替える。 スターバックスは、2020年までに世界全店舗でプラスチックストローを段階的に廃止する計画。 コカ・コーラはペットボトル素材として、リサイクル素材あるいは植物由来PETの採用を推進し、2030年までにペットボトルの50%をリサイクル可能素材にすることに挑戦する。

日本での取り組み

こうした国際的な潮流の中で、日本でも、脱プラスチックに向けた取り組みが本格化しつつある。

2019年3月には、環境省が「プラスチック資源循環戦略案」を取りまとめた。本重点戦略では、レジ袋有料化の義務付けや、国内で資源循環体制の構築、 2030年までにバイオプラスチックを約200万トン導入、再生利用を倍増などを掲げた。

企業ごとの取り組みに目を向けると、ファーストリテイリングは2020年をめどにグループ全体で、 ショッピングバッグと商品パッケージの85%に当たる約7800万トンの削減を目指す。 セブンイレブンはすべてのおにぎり包装を、バイオマスプラスチックに切り替える方針を明らかにするなど、大手企業を中心に明確な目標が打ち出されつつある。

脱プラスチックによる経済波及効果

世界の脱プラスチックへの流れは、各業界・企業へどのような影響が生じるのか、 経済予測SaaS『xenoBrain(ゼノブレイン)』 の分析結果の一部を見てみよう。

上図は、xenoBrainの分析結果の一部です。

【注目】生分解性プラスチックとは?

政府がまとめた資源循環戦略案では、プラスチック製のレジ袋やトレーの抑制を目指すとともに、資源再利用やバイオプラスチックの普及を促す。化石燃料由来のプラスチックは分解されにくく、微細化した「マイクロプラスチック」が海洋中の生態系に悪影響を及ぼす懸念が指摘されている。各企業が包装や繊維、機器などの素材を化石燃料由来のプラスチックからバイオプラスチックへの切り替えを進めている。

バイオプラスチックの一つ、「生分解性プラスチック」とは通常のプラスチックと同様の耐久性を持ち、使用後は自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO₂と水にまで完全に分解されるプラスチックと一般的に定義されている。生分解性プラスチックは分解性に係る機能に着目している。

この生分解性プラスチックはEUで徐々に市場投入され、国内でも導入が始まりつつある。

生分解性プラスチックの世界生産量は88万トン、全世界のプラスチックに占める割合は1%未満で存在感は小さい。22年には108万トンの生産が予測されているが、各国政府による後押しでプラスチック製品に対する環境規制や外食チェーンによる自粛の動きが拡大し、予測を上回るスピードでさらなる需要が期待される。

出所:Green Japan

生分解性プラスチック関連企業

xenoBrain によって示された生分解性プラスチック関連企業の現状を以下にまとめた。

企業名 取り組み
カネカ (4118) 2019年1月に欧州委員会で包装材料として、「カネカ生分解ポリマーPHBH」が認定された。2019年秋にも欧州全域での使用が可能になる見通し。
三菱ケミカルHD (4188) 生分解プラスチックのバイオPBSを開発。使い捨て食器や紙コップ、ストロー、ガスバリア包材などの食品包装材用途でも使用可能。
ユニチカ (3101) 生分解性プラスチックの「テラマック」を開発。ストローや不織布、電子機器などに幅広く展開。
クラレ (3405) バイオマス原料由来のガスバリア材。食品包装として使用。食品メーカーからの採用が進んでいる。
東レ (3402) バイオマス由来ポリマー素材。生活・土木・農業資材分野に展開。
凸版印刷 (7411) 二酸化炭素排出量を40%削減する包装材フィルムを開発。

G20での国際合意により今後ますます廃プラ規制、脱プラスチックの流れは加速することが予想される。生分解性プラスチックか、また別の新たな素材が注目を集めるか、国際的に不可避な脱プラの流れの中で、各企業の取り組みには注視が必要だ。