新型コロナウイルスの感染拡大が続き、中国に生産・販売拠点を構える日本企業の業績に対する影響も懸念され始めた。AI(人工知能)でニュースを解析し、経済動向を予測するサービス「xenoBrain(ゼノブレイン)」で分析したところ、ドラッグストアなどインバウンド(訪日外国人旅行者)関連企業への打撃を除くと、自動車メーカーなどの売り上げや利益に与える影響はそれほど大きくないとの結果が出た。

中国では、「COVID-19」と名付けられた新型ウイルスによる肺炎の死者が1700人を超え、感染者は7万人を突破した。 春節(旧正月)の大型連休が終わった後も自宅待機する人が多く、経済活動は正常化にはほど遠い状況。中国政府が海外への団体旅行を禁止したことで、日本をはじめ各国を訪れる中国人旅行者が大きく落ち込み、化粧品や家電製品の「爆買い」減少や宿泊施設の大量キャンセル、航空便の運航停止が相次ぎ、インバウンドに関連する企業の業績には打撃を与えることが確実な情勢だ。
社会で起きるさまざまな現象は、株式市場にも影響を与える。ニューヨーク株式市場は1月末にダウ工業株30種平均が急落したが、ウォール街では「この問題の影響は限定的だ」との見方が多く、その後は史上最高値水準まで上昇。東京株式市場の日経平均株価も大きく下げたあとは回復基調をたどる。ただ、市場関係者の間でも、新型コロナウイルスの影響を見極めるにはもうしばらく時間が必要だとの考えが支配的で、今後も不安定な動きを続ける可能性が高い。
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こうした中、インバウンド関連消費の落ち込みに加えて、中国に生産・販売拠点を展開する企業への影響も懸念されはじめた。中国に工場がある企業は、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車やソニー、ルネサスエレクトロニクス、京セラ、日本たばこ産業など数多い。小売り業界でもファーストリテイリング、良品計画、ニトリホールディングスなどが店舗を展開している。
新型コロナウイルス問題への懸念が強まった2月初頭にゼノブレインで企業業績への影響を分析したが、訪日外国人向けの売り上げが多いドラッグストアへの打撃が大きいとの結果になった。AIは日々蓄積されるニュースを「学習」し、予測の精度を高めようとしている。そこで改めてゼノブレインにより日本企業への影響を調べてみた。分析結果は、売り上げや利益の減少につながると予測された企業は膨大な数に上るが、影響度が大きいと評価されたのは「訪日外国人数減少→ドラッグストア需要減少」のシナリオであることに変わりはなかった。ただし、マスクの需要が急拡大していることはプラス要因だ。
中国に生産・販売拠点がある日本企業については、自動車メーカー、スーパー、外食企業などが減収候補にピックアップされたが、いずれも影響度は小さいとの判定だった。スーパー、外食は中国での販売比率がそれほど大きくないことが一因だと考えられるが、自動車メーカーの場合は、影響が十分読み取れていない面もありそうだ。
中国での経済活動が低迷することで、物流業界にもマイナスの影響が見込まれる。工場や店舗が稼働しなければ、資材や商品の輸送需要も落ち込む。ゼノブレインの分析では、物流企業の売り上げ減少のシナリオを描く一方、プラスの要因も働くという予測も示した。新型ウイルスへの感染を防ぐため、中国で暮らす人々の間では外出を控えてインターネット通販や電子商取引(EC)の利用が増え、物流企業の増収要因になるとの分析が働いたとみられる。「EC需要増加→物流需要増加」の関係を指摘し、多数の企業の増収要因になるとの解析結果が提示されたが、この場合の影響度も大きくはなかった。
現時点までのニュースの分析からゼノブレインは、インバウンド関係以外の分野では、新型コロナウイルスが企業業績に及ぼす影響は限定的だと評価した。ただ、今後の感染拡大状況などによって日本や世界の経済への影響度合いは変わってくる。楽観はできない。
【2020年2月17日 時事通信社提供 】
【注】
※ 本記事は、AIがアルゴリズムにより解析した結果を表示しております。また、登場する企業の総合的なリスク要因を鑑みた評価ではなくあくまで特定のトピックから受ける影響を予測しております。
※ 本記事は、特定の有価証券や金融商品の売買を勧奨するものではありません。
※ 本記事は、時事通信社とゼノデータ・ラボの提携に基づき転載しておりますが、タイトル等一部表現を変更している箇所がございます。
※ 時事通信社との提携記事 〔xenoBrain AI解析 〕 シリーズは毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)に配信予定です。