欧州での大流行の影響は?新型コロナ予測レポート第2弾 〔xenoBrain AI解析〕

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 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界経済に深刻な打撃を与えるとの懸念が強まっている。AI(人工知能)による経済予測サービスを提供するフィンテック企業、ゼノデータ・ラボは、新型コロナに起因する経営リスク対策の必要性が高まっていることを受け、この問題が国内上場企業の業績に与える影響の分析結果をまとめたレポートの第2弾を公開した。前回のレポートでも取り上げた減益、増益それぞれの影響度が大きいと予想される企業のランキングをアップデートするとともに、分析対象を欧州や中東、アジアにも拡大した。

 中国で始まった新型コロナウイルスの感染は、日本や米国をはじめ欧州、中東、アジア諸国など南極を除く六大陸に広がる。感染者は日々数万人単位で増加し、米国が中国を抜いて世界最多となった。イタリアとスペインの死者が中国を上回るなど欧州での大流行にも歯止めがかからない。世界的な感染拡大が続く中で、東京オリンピックの延期が決まり、小池百合子東京都知事はロックダウン(都市封鎖)を回避するため近隣自治体とも連携して住民に不要不急の外出自粛を要請した。
 世界保健機関(WHO)が新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)を宣言し、各国は相次いで住民の外出規制や渡航制限、国境封鎖を実施し、国際的なヒト、モノ、カネの流れは一気に滞った。国際通貨基金(IMF)によると、2020年の世界経済はリセッション(景気後退)に向かい、リーマン・ショック後の2009年以来11年ぶりのマイナス成長になる見通しだ。景気の先行指標とされる株価はニューヨークや東京市場など世界規模で暴落状態に見舞われた。 

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 日本企業への影響も広がっている。インバウンド(訪日外国人客)の減少による航空、旅行、宿泊、飲食業などの売り上げに打撃を与え、サプライチェーン(部品供給網)が混乱することで自動車など製造業の業績下押し要因になっている。一方、感染防止のために在宅勤務を導入する企業の急増を受けてテレワーク関連業界には特需が発生するなどプラスの影響が及ぶ企業もある。
 証券取引所に株式を上場する企業は、業績予想に変動があった場合などは情報を開示する必要がある。旅行会社のエイチ・アイ・エスなど既に大幅な業績予想の下方修正を公表した企業もあるが、従来の予想を撤回したうえで「未定」とするところも少なくない。AIが示す予測は、経営リスクを判断する上での参考情報になる。

 ゼノデータが提供するサービス「xenoBrain(ゼノブレイン)」は膨大なニュースと企業の決算情報をAIで解析し、さまざまな社会現象が企業の売上高や利益の増減に与える影響を予測。ニュースの分析から今後予想されるシナリオを導き出し、どのような企業に影響が及ぶのか、業績への影響度はどの程度かを因果関係がわかるようツリー図で「見える化」して結果を表示する。
 3月9日に公表した影響予測レポート第1弾では、日本や米国など各国別に感染が拡大した場合を想定し、減益や増益になる可能性が高い日本企業のランキングを掲載。「臨時休校実施」「イベント中止」「マスク需要増加」などのさまざまなシナリオ別に業績への影響が予想される企業をピックアップした。第2弾のレポートでは、多くのニュースを日々読み込んでいるAIの学習結果を反映させ、第1弾の分析をアップデートするとともに、深刻化する欧州やインドネシア、イランでの感染拡大に伴う分析などを追加した。

新型コロナウイルスが欧州に感染拡大した際の企業業績への影響を可視化した図
xenoBrainから一部抜粋


 欧州ではイタリアとスペインでの死者が中国を超えるなど新型コロナが猛威を振るっており、国境封鎖や外出禁止、学校の一斉休校、スーパーマーケットと薬局を除く店舗の閉鎖などを打ち出す国が相次いでる。こうした状況下、フランスとポルトガルなどに生産拠点を持つトヨタ自動車をはじめ、欧州に生産拠点がある日産自動車、ホンダ、ヤマハ発動機も工場の操業停止や生産縮小を強いられるなど日本企業にも影響が及んでいる。
 ゼノデータのレポートでは、イタリアの「物流需要減少」「現地法人生産減少」「観光需要減少」などのシナリオをピックアップ。海運、自動車、旅行会社などの売り上げ減少要因になるとの予測を示した。
 新型コロナの影響はどの程度の規模になるのか。ウイルス感染の終息時期が見通せない中で、それを予測するのは難しい。一方では米国が2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策を打ち出すなど20カ国・地域(G20)は総額5兆ドルを超える資金を投じて世界経済への影響を最小限に抑える方針。こうした対策の効果を含め、今後もゼノブレインのAI予測に注目したい。

【2020年3月30日 時事通信社提供 】

《欧州への新型コロナウイルス感染拡大による影響が大きい企業》
・6473 ジェイテクト
・6471 日本精工
・4324 電通グループ
・5334 日本特殊陶業
・6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ
・6861 キーエンス
・7211 三菱自動車工業
・7261 マツダ
・9101 日本郵船
・2587 サントリー食品インターナショナル


【注】
※ 本記事は、AIがアルゴリズムにより解析した結果を表示しております。また、登場する企業の総合的なリスク要因を鑑みた評価ではなくあくまで特定のトピックから受ける影響を予測しております。
※ 本記事は、特定の有価証券や金融商品の売買を勧奨するものではありません。
※ 本記事は、時事通信社とゼノデータ・ラボの提携に基づき転載しておりますが、タイトル等一部表現を変更している箇所がございます。
※ 時事通信社との提携記事 〔xenoBrain AI解析 〕 シリーズは毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)に配信予定です。